さあトレモロ曲を弾きましょう!(もう弾いていますね。)
トレーニングで満点が取れるまでやってから曲を弾くのではなく、曲を弾く中でトレーニングの成果を確かめながら続けるのがいいと思います。なんといっても曲を弾くために練習しているんですから。
そして曲の中では、トレモロはただそろっていればいい訳ではなく、強弱・テンポの変化、フレージングなど、音楽としての表現に結びつかなければなりません。そして表現への意欲が大きくてトレモロの粒が乱れることがあってもいいのですが‥‥
トレーニング1と2で各指への意識が高まって、音の粒もそろい、低音担当のp とのバランスもよくなってきたことと思います。
でも音のバランスは曲の中でしか練習できません。曲ごとに、またフレーズごとに、要求されることが違うからです。
余談になりますが、基礎練習のひとつ、アルペジオは右手のフォーム・指の位置と動きを整えるのに非常に大切な練習です。そのパターンは無限ですので、たくさんのパターンの練習が考えられます。
よく使われているのはジュリアーニの<120の練習>でしょうか。これだけたくさんのパターンをやっておけば、何が来てもオーケーさ!」と思いたいところですが、そういった考えは音楽には当てはまりませんし、指にとって無理な動きをやりすぎるのは、身体にも心にもよくありません。曲の中で、そのアルペジオでどんな表情を出すのかを感じて弾くべきです。音符の順番にただ指が動いても何の意味もありません。音の動きの違いがどのように音楽の表情を豊かにしてくれるかを感じて弾きたいものです。
さて、この実践編では7つの短い曲でトレモロを表情豊かに弾いて、憧れの「アルハンブラの思い出」へ近づいていきましょう。もちろんアルハンブラへの道はたくさんありますし、最後は自分で見つけることになります。その探索のヒントになったら嬉しいです。
練習曲1プレリュード(カルッリ) 小さな思い出(小川和隆)
トレモロ3実践編 1
練習曲2 アルハンブラへの4つの小径(小川和隆)
トレモロ3実践編 2 アルハンブラへの4つの小径
動画は準備中です。
トレモロに求められる音楽の4つの表現
1 ダイナミクス(強弱の変化)
2 テンポの変化
3 ブレス(フレージング
4 音色の変化
普通に音楽の表現にとっての大切な要素ですね。
1 ダイナミクス
トレモロの強弱はタッチの深さと指の振りの大きさで作ります。小さな音は浅いタッチで小さな振りで、大きな音を出すためには深くタッチして大きく指を振ります。ただし、大きく振る時に、決して弦を叩いてはいけません。指先が弦にどのように触れているか、『弦の気持ち』を感じましょう!
トレーニング1で、ppからf まで様々なタッチを試して、曲に応用してください。
2 テンポの変化
やはりトレーニング1を速度を変えて練習して、速いだけでなく、自由にコントロールできることを目指してください。曲の終わりのリタルダンドがきれいに、思い通りにできるように!
3 ブレス
トレモロでのフレージングはなかなか難しいです。初めは「トレモロのpami のi までを弾ききって、間をとる」から始めるのがいいと思います。音楽の表現としてはスマートではありませんが、まずそこで止まって、息をとること(ブレス)に慣れることです。慣れてきたら、トレモロをデクレッシェンド、さらにほんの少しリタルダンドして、きれいなフレージングをしましょう。
目指すところは、歌や管楽器のフレージング、すなわち息づく歌です。
4 音色の変化
ギターの音色は右手の弾く位置の違い(フレット寄りで柔らか、ブリッジ寄りで固め)と、右手の弦に対するタッチの角度で大きく変わります。
トレモロでは、ami を弦上にそろえたままで、右の肘の位置は変えずに、手首の角度を変えます。指先をブリッジ寄りにすると手首が出て指が立って音も立ちます。逆に指先をフレット寄りにすると手首は表面板に近くなり、指先は弦に対して斜めになってソフトな音になります。この変化は、身体の緊張感とも一致しています=立つと硬い緊張、斜めでゆるい弛緩。これはかなり上級のテクニックですが、ギターの持つ表現力の大きさです。チャレンジしてください。
練習曲について
練習曲1プレリュード(カルッリ) 小さな思い出(小川和隆)
トレモロ3実践編 1
練習曲2 アルハンブラへの4つの小径(小川和隆)
トレモロ3実践編 2 アルハンブラへの4つの小径
*1〜3は左手はごくやさしいのでp の移弦に注意して、テンポ・ダイナミクス・音色など、自由な表現でトレモロを活かしてください。
*「アルハンブラへの4つの小径」には表現を書き入れてみましたが、これも自由にどうぞ。
ここで大切なのは、p の移弦とともに低音弦の消音です。低音はすべて開放弦ですので、弦が変わる時に前の弦を消音する必要があります。
初め右p が5弦を弾いて、次に6弦をアポヤンドして5弦を止めます。6弦から5弦に行く時はpの外則で6弦に触れて消音します。これはpの基本のテクニックとしてとても重要です。
トレーニング2のp の先取りが役に立ちます。
この消音のテクニックはトレモロで使うのはかなり難しいと思いますので、まずは p の伴奏だけの練習をしてください。その際、トレモロのメロディーをトレモロをしないで楽譜の通りに(付点2分音符で)弾くといいでしょう。こうすると左の運指に集中できて、トレモロにとらわれずに音楽の形をつかむことができます。他のトレモロ曲でも是非やってください。
そしてトレモロにすることで、単音で弾くよりより細やかな表情の音楽が創れるでしょう。
それこそがトレモロの魅力です。